「んもう!まただ!」
ぷんすかと今年入った総務課の新人が怒ったように画面を睨む
「どうした?」
たまたま後ろを通りかかったので無視するわけにもいかないだろう。
もしかしたらシステムの障害かもしれないし。
「営業2課のK山さん。いつまでも書類出してこないから掲示板の閲覧見たらやっぱり見てなくて。前もそうだったんですよ!」
「あぁ、K山さんね・・・。」
新しくグループウェアを導入した際、積極的にグループウェアで情報共有しましょう。掲示板機能や回覧板機能を積極的に使いましょうということになった。
総務からのお知らせもほとんどグループウェアの掲示板に掲載するので、ほとんどの職員は端末を起動すると真っ先にグループウェアを起動するのだ。
メイン画面には未読のメッセージや掲示板スレッドが表示されるようになっている。
が、これもグループウェアを起動しての話。起動しなければ意味がないのだ。
[0回]
K山は中堅社員で、営業2課でもトップクラスの成績を持つ。
有能なはずなのだが、いかんせん態度が目立つ。
前にもグループウェアを起動させないので注意したら、
「そんなもんなくても仕事できる」
と言いのけた。
「在籍しているかどうかもみんなこれで確認しているんですよ。伝達事項もこれで配信するんですから」
「あぁわかったよ」
といったん起動はするものの、翌日からは起動しなくなる。
以前はそれでも毎日起動させていたのだが、サーバー障害以来、基幹システムの起動用ショートカットをデスクトップに置いてから起動させなくなった。
そう、以前はグループウェアから基幹システムを起動させる仕組みだったのだ。
「なんとかなりませんか?掲示板確認しなかったらどんどん文字が大きくなるとか・・・」
あぁ、そうか、この子はK山がグループウェアすら起動させていないことを知らないんだ。
知っているのはシステム管理者の私ぐらいか。
「そいつぁ無理だが、ま、俺からも言っておくよ」
さて、困ったものだ。うるさく言うとその場では起動しても、また起動しなくなるのもわかっている。
いっそのこと基幹システムのショートカットをデスクトップから削除しようか。
いや、それもサーバー障害があってからなかなかできない。グループウェアが止まると業務が止まってしまう。
「やっぱりこれしかないかなぁ。」
グループウェアにはタイムカード機能がある。当社では不思議とタイムカードがなく、出勤したら出勤簿にハンコを押すことになっている。残業は手書きだ。
それをグループウェアのタイムカード機能に置き換えれば、いやでもグループウェアを起動させなくてはならないし、時間外の集計も総務課は楽になるはず。
ただ、残業承認機能がないため、そこをどうやってクリアするかだ。
とりあえず、手書きの残業申請とタイムカードを併用させることにした。
そして、タイムカード使用開始の日。切のいい月はじめから開始となった。
「おい!なんだこれは!」
K山から電話がかかる。
「今までグループウェアを起動させなかった罰です。」
こちらからK山あてにメールを100通ぐらい送りつけてやった。
当然未読メールでメイン画面がいっぱいだ。
一斉既読にする機能は禁止させている。
ひとつひとつ開かなくてはいけないのだ。
「これから毎日開いて確認してくださいね。」
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